小野薬品工業のサステナビリティ

アンカーリンク用

当社は、1717年(享保2年)の創業以来、「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という企業理念のもと、薬業一筋に邁進してきました。2021年度に、持続可能な社会の実現のために「サステナブル経営方針」を新たに策定しました。

小野薬品のマテリアリティ

中長期の目指す姿
1
  1. トップサイエンティストと協働して世界を変える新薬づくりを加速し、新薬候補のPOC確立のスピードと精度を向上させるとともに、ライセンス活動によりパイプラインが拡充している。
2
  1. 世界で闘えるスペシャリティファーマとして、グローバルでの事業拡大を加速している。
3
  1. 患者さんとそのご家族のウェルビーイング実現に医療従事者とともに挑み、その結果として新薬が速やかに浸透している。
4
  1. デジタルや当社の強みを活用し、社会課題の解決、次世代ヘルスケアの実現に貢献する。
5
  1. セキュアなグローバルIT基盤を整備するとともに、デジタルによる企業変革を実現している。
6
  1. 企業理念・ビジョンの実現に向けた人財戦略に基づき、事業の成長に資する人財の採用と育成、そして多様性の向上と一体感の醸成につながる組織風土の実現に向けて取り組みを進めている。人財を惹きつける制度・施策が定着しており、かつ全ての社員が安心・安全に働くことのできる環境が提供されている。
7
  1. 人々が健康で健全な社会を迎えらえるよう、「ECO VISION 2050」のもと、製薬業界における環境リーディングカンパニーを目指し、次世代へ豊かな地球環境を引継ぐことに努める。
8
  1. 品質保証および安全管理の業務を適正に行うとともに、患者さんに当社製品を安定的かつ継続的に改善しながら供給する。
  2. 国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいたマネジメントを実践するとともに、ビジネスパートナーのサステナビリティ関連リスクを把握し、持続可能な社会の実現を目指して共に取り組んでいる。
  3. 希少疾患や小児疾患に対する革新的医薬品の提供と医療インフラの未成熟な地域での医療基盤整備に貢献する。
9
  1. コンプライアンス違反の未然防止を実現するコンプライアンスリスク管理体制の確立など、持続的な成長を実現するための実効性あるガバナンス体制を構築する。

2021年度に新たに策定したサステナブル経営方針の下、財務と非財務の経営課題をより統合的に分析、管理する目的で、2021年度にマテリアリティの位置づけを“CSRの重要課題”から“経営の重要課題”へと変更しました。特定したマテリアリティは中期経営計画の戦略と明確に連動させ、より推進力のあるマネジメント体制に発展させています。
また、社外のステークホルダーに当社のサステナビリティに対する取り組みを理解いただく上でも、財務と非財務を統合した情報開示と対話が可能になったと考えています。
さらに、2024年4月に米国Deciphera Pharmaceuticals社が小野薬品グループに加わり、欧米での自販が可能になったことが契機となり、見直し検討を開始しました。今回の見直しは2021年度に実施したマテリアリティ特定プロセスを変更することなく、継続した機関投資家との対話内容も踏まえ、2025年3月に18項目のマテリアリティを9項目に集約しました。

マテリアリティの特定プロセス

2021年度に実施したマテリアリティ分析は以下のプロセスで行い、毎年進捗を確認するとともに更新しています。

マテリアリティの特定プロセス
マテリアリティの特定プロセス

ステップ1 課題の抽出と整理

マテリアリティ分析では、候補となる経営課題を抽出するために、中期経営計画の策定と併せて経営環境分析を行いました。この中で、当社の価値を創造し、持続的に成長するための重要な機会とリスクを抽出しています。
外部/内部の経営環境分析には、取締役、執行役員、全部門のシニアマネジメント層が参加し、事業を取り巻く経営環境、当社の長期ビジョンと現状とのギャップ分析を実施しました。さらに各部門が日頃の活動の中で確認しているステークホルダー(医療関係者、研究機関、パートナー企業、求職者、NPO、投資家等)からの要望・期待を踏まえ、経営課題を抽出しました。
非財務課題については、成長戦略を実現するために必要な基盤として人的資本や知的資本等の無形資産に関する課題を抽出しました。また、ISO26000、GRIスタンダード、SASB基準、国連グローバル・コンパクト10原則、ESG評価機関、投資家との対話の結果などを踏まえ、課題を更新しています。なお、課題の分析に当たっては、検討の経過を取締役会において報告し、確認を得ながら進めました。

ステップ2 マテリアリティの特定・妥当性確認

2021年のマテリアリティの特定にあたっては、まずStep1で抽出された課題を「価値創造」、「価値創造のための基盤」、「価値の保護(価値毀損リスク)」に分類しました。「価値創造」と「価値創造のための基盤」は、当社にとっての機会であり、「価値の保護」は当社にとってのリスクと認識しています。さらに経営会議などの場において、ステークホルダーにとっての重要性と事業にとっての重要性の視点から、最重要課題である18個のマテリアリティを特定しました。その後、2024年4月に米国Deciphera Pharmaceuticals社が小野薬品グループに加わり、欧米での自販が可能になったことが契機で見直しを行いました。継続した機関投資家との対話内容も踏まえ、2025年3月に18項目のマテリアリティを9項目に集約しました。マテリアリティは取締役会にて検討のうえ、最終決定しています。
マテリアリティの各課題を選定した理由と主な目標と進捗については「マテリアリティ課題への対応」をご覧ください。

2024年度に整理したマテリアリティ分析においては、分析のプロセスおよび特定したマテリアリティ課題、今後の取り組みについて、外部有識者とのダイアログを実施し、その妥当性と将来課題について確認しました。

創業300年にわたり人々の健康と真摯に向き合ってきた小野薬品だからこそ
地球規模課題の解決において存在感を発揮することを期待します
CSRアジア 日本代表
赤羽 真紀子氏

詳しくはこちら

今回の新しいマテリアリティは、米国Deciphera社を買収したことにより、会社が成長されたため、これまでのマテリアリティと現状に乖離が生じたこともあり、既存のものを見直す形で実施されました。また、この見直しにあたり、ステークホルダーの指摘に応える形で、マテリアリティの項目数も約半分ほどに集約されました。社内外の状況に応じ、速やかにマテリアリティの見直しを実行されたことは、状況変化にスピード感をもって対応できる貴社の柔軟さをよく示すものと高く評価いたします。
貴社は「ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)」において、医薬品セクターでトップスコアを獲得し「ワールド・インデックス」と「アジア・パシフィック・インデックス」の構成銘柄に5年連続で選定されています。このことは、日本で誕生した製薬会社として「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という企業理念のもと、300年以上にわたり人々の健康に真摯に向き合ってきた貴社の誠実さが、サステナビリティ対応として具現化され、それが世界的に評価されたことの表れといえます。
新たに見直された9個のマテリアリティには、小野薬品の社会的価値を一層高めるために必要な項目がすべてカバーされています。しかしながら、マテリアリティの項目はどの企業にも当てはまる項目がそろいがちですので、今後は小野薬品らしいマテリアリティの項目も盛り込まれることを推奨いたします。たとえば、世界で必要とされる製薬会社として、世界から解決を期待されている社会課題をマテリアリティの項目として掲げることも必要です。すでに貴社も取り組まれている「医療へのアクセス」は、今般のマテリアリティの項目としては掲げられていませんが、世界中のステークホルダーが注目する地球規模課題です。グローバルの舞台において貴社がさらに評価され、存在感のある会社となるためにも、マテリアリティの項目として取り上げあることをぜひご検討ください。

マテリアリティを再編したことで、読み手の理解しやすさが向上
「中長期の目指す姿」の可視化が今後のかぎ
株式会社ニューラル
CEO
夫馬 賢治氏

詳しくはこちら

小野薬品工業は、以前から、非常に網羅性高く幅広いテーマを「マテリアル(重要)」なものと認識し、テーマ毎の指標・目標と取り組み内容を詳細に開示しています。そして、今回改定されたマテリアリティは、前回の内容からさらに研ぎ澄まされた内容となっています。関連していた項目が集約されたことで、経営にとっても、主な読み手となる投資家にとっても、重要性の高いテーマが理解しやすくなったと感じます。
具体的には、「成長戦略」として4つのテーマを、「成長戦略推進のための基盤」として2つのテーマを明確に定めたことで、中長期的に目指す姿と企業価値向上の関連性が把握しやすくなりました。とりわけ、小野薬品工業が掲げていた「欧米自販」を実現した今、その先には開発も含めたグローバル化を実現していくということが明確に描かれています。グローバル化を支える組織体制づくりという面でも、「人的資本の拡充」の課題設定と一貫性があるものになっている点を高く評価します。
一方、「持続可能な社会の実現」については、いずれも重要なテーマではありますが、各テーマと企業価値との関係性をより深く理解していく必要があるようにも見受けられます。特に、研究開発型の製薬企業は、遺伝的資源やバイオ資源への依存度がある程度高く、生物多様性課題との関係性が深いことから、今後サプライチェーンも含めたリスクマネジメントの感度を上げていくことが必要となります。さらに、デジタル・ITによる企業変革に伴い、サイバーセキュリティ個人情報保護についてもより一層の進化が望まれます。
マテリアリティを特定した後には、「中長期の目指す姿」を測定可能な状態で設定していけるかが鍵となります。抽象度の高く曖昧な目標では、進捗状況を測ることができません。最初から達成がみえていなくとも、あえて野心的な目標を掲げ、達成状況を見据えながら調整をしていくことが、企業をあるべき姿へと変革していく道となります。

ステップ3 KPI設定・レビュー

2021年度に再特定したマテリアリティの各課題については、中期的な目標と計画を立て、進捗を確認しています。また、全社的リスクマネジメント(ERM)で抽出、管理しているリスクと統合的に管理しています(ERMについてはこちら)。
マテリアリティ毎のKPIおよび進捗は中期経営計画と連動し、対応する本部、組織、委員会へ紐づけ、全社的なPDCAマネジメントサイクルを構築するとともに、取締役会および経営会議において管理しています。また、毎年、外部/内部環境を分析し、マテリアリティ課題と中長期目標に対する進捗をレビューするとともに定期的な見直しを実施しています。
2023年度は年次見直しに伴い、一部のマテリアリティ項目の名称、内容について変更し、さらに、2025年3月に18項目のマテリアリティを9項目に集約しました。
マテリアリティ課題を選定した理由、主要な目標と取り組み、年度毎の進捗は以下をご覧ください。

2021年度までの取り組み

当社はこれまで、ISO26000に基づいて重点領域を定め、CSR活動に取り組んできました。2018年度には、当社が優先的に取り組むべきCSR活動テーマを明確にするため、“CSRの重要課題”としてマテリアリティを特定し、それをもとにCSRの実践に取り組んできました。
2021年度までに進めてきたマテリアリティ課題に対する計画と進捗は以下をご覧ください。

サステナビリティ推進体制

当社では、取締役会がサステナブル経営における重要な経営課題(マテリアリティ)を監督しており、サステナビリティ経営の最高責任者として代表取締役社長を、サステナビリティ担当役員として代表取締役 副社長執行役員を任命しています。
代表取締役社長のもと、サステナビリティ戦略会議(サステナビリティ担当役員が議長を務め、代表取締役社長、各本部長、監査役、および議長が定める本社事業所長で構成)を設置し、重要事項についての議論・審議を行っています。なお、サステナビリティ戦略会議は、下図に示す6つの委員会とともに、取締役会との連携を密にするコーポレート・ガバナンス体制を構築しています。

推進体制図

国連グローバル・コンパクトへの参加

当社は2017年11月、国連が提唱する人権・労働・環境および腐敗防止に関する10原則からなる国連グローバル・コンパクト(以下、UNGC)に参加しました。関連法規を遵守するとともに、日々の活動の中に「UNGCの10原則」を浸透させ、全社員の行動につなげています。

UNGCの10 原則
《人権》
  • 原則 1:人権擁護の支持と尊重
  • 原則 2:人権侵害への非加担
《労働》
  • 原則 3:結社の自由と団体交渉権の承認
  • 原則 4:強制労働の排除
  • 原則 5:児童労働の実効的な廃止
  • 原則 6:雇用と職業の差別撤廃
《環境》
  • 原則 7:環境問題の予防的アプローチ
  • 原則 8:環境に対する責任のイニシアティブ
  • 原則 9:環境にやさしい技術の開発と普及
《腐敗防止》
  • 原則 10:強要や贈収賄を含むあらゆる形態の腐敗防止の取組み

当社は、「UNGCの10原則」に対する取り組み状況を、進捗報告であるCommunication on Progress(CoP)にて、毎年、UNGCに提出しています。

持続可能な開発目標への取り組み

小野薬品が貢献するSDGs

私たちは革新的な医薬品の創製を通じて、SDGs3、9、17の達成に貢献します。

目標3「すべての人に健康と福祉を」では、「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という企業理念のもと、医療用医薬品に特化した研究開発型企業として、事業活動を通じて目標達成に取り組みます。SDGsターゲットで挙げられている「非感染性疾患の死亡率」については、がんや免疫疾患、中枢神経疾患などの重点研究領域を始めとする、いまだに医療ニーズが満たされない疾患に対する独創的で革新的な治療薬を創製することで貢献します。また、低所得国および低中所得国における医療アクセスの改善に向けて、NGO等とのパートナーシップにより、医療人材育成や医療環境整備など、医療システム強化に中長期的に取り組んでいきます。

目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」では、イノベーションの促進および研究開発基盤構築が当社の貢献するべき点と考えています。新薬創製の研究開発を活発に行うために、当社内の研究開発に投資をするのはもちろんのこと、医師主導治験などにも助成を行っています。加えて、公益財団法人 小野医学研究財団やONO Pharma Foundationによる国内・海外研究者への研究助成を通じて、研究の振興を図り、イノベーションの土壌作りに貢献します。

また、当社にとってはイノベーションの促進と目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」は切り離せるものではありません。「革新的な医薬品の提供」は当社単独のみならず、多くのパートナーシップによって達成していきます。当社は、「オープンイノベーション」という言葉が盛んに使われるようになるかなり以前から、さまざまな分野で世界の最先端技術や知見を活用した自社創薬を推進してきました。同時に、新薬候補化合物の導入および導出にも積極的に取り組んでいます。また、ベンチャー企業や他の製薬企業との提携活動に加え、大学、研究機関、行政、地域社会、NPOなど、多様なステークホルダーとパートナーシップを形成し、「オープンイノベーション」で課題の解決に取り組んでいます。なお、当社の主な提携先企業はこちらからご覧いただけます。