当社の事業活動が健全な地球環境に支えられて成り立っている事を認識し、持続可能で豊かな社会の実現のために、生物多様性に影響を与える環境リスクの低減に努めるとともに、生物多様性の維持・保全に貢献します。また、日本経済団体連合会の「経団連生物多様性宣言イニシアチブ」に賛同し、経団連自然保護基金に寄付を行っています。
「経団連生物多様性宣言イニシアチブ」ならびに賛同企業・団体につきましては「こちら」をご覧ください。
豊かな地球環境(生態系)は、食料や水など私たちの生活に恵みをもたらすだけでなく、気候変動や災害の緩和、感染性病原体や寄生虫などの発生抑制、ならびに精神的・文化的な安定にも寄与しており、私たちの健康生活に極めて重要な役割を果たしています。当社は、次世代に豊かな地球環境を引き継げるよう、事業活動による地球環境への依存と影響を確認し、影響を最小限に留めるため、様々な取り組み(医薬品の環境影響評価、化学物質管理、遺伝子組換え生物および病原体等の管理、大気・水質・土壌の汚染防止など)を推進します。革新的な医薬品の創製を通じて人々の健康に貢献するとともに、地方自治体やNPO・NGOなどのステークホルダーと協働し、2030年までに生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の達成に貢献できるよう、取り組みを進めていきます。
2024年度、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の最終提言(v1.0)に沿って当社の事業活動における自然関連のリスクおよび機会を特定しました。気候変動に加えて生物多様性についても適切に情報開示を行います。詳細は、「TNFD提言に基づく情報開示」のページをご覧下さい。
医薬品の製造過程、ならびに医薬品の適正使用による排泄や医薬品の廃棄を介して環境中に排出された医薬品有効成分(人に投与された場合はその代謝物も含む)は、それらの生理作用、物理化学的および生物学的な性状に起因して、生態系に影響を及ぼす可能性があります。当社の工場では、医薬品原薬の科学的な特性を考慮して失活処理(酸化分解、還元、アルカリ加水分解など)を実施し、環境中へ有効成分の排出を防いでいます。また、動物実験やヒト臨床試験結果から職業暴露限界(OEL)を推定し、カテゴリー4(OELが10μg/立方メートルより低い化学物質)以上の医薬品有効成分を「高活性医薬品原薬」と定義し、これらを含む廃水は全て回収し業者に焼却処理を委託しており、環境への放流は行っていません。
医薬品原薬の環境影響評価は各国のガイドラインに基づき適切に対応しています。当社では医薬品承認申請を目指す新規の化学物質および上市済みの医薬品原薬については、コンピューターシミュレーションによる定量的構造活性相関(QSAR)により環境有害性を予測し、安全性データシート(SDS)に結果を記載しています。また、上市済みの医薬品原薬は、順次、水生生物への影響を評価し、SDSにて結果を公開します。
化学物質の使用量削減に努めます。また、化学物質の排出については、法令遵守はもとより、人の健康や生態系に影響を与えることを認識し、排出抑制に取り組んでいます。
当社では人の健康や生態系に有害な影響を及ぼす恐れのある化学物質について、化学物質排出把握管理促進法のPRTR制度に基づき適正な管理を行っています。2024年度、国に報告したPRTR法第一種指定化学物質の取扱量(年間取扱量が1トン以上の物質)は、1.7トンであり、大気中の排出量は0.0トンでした(排煙設備に設置した活性炭により回収)。2023年度からPRTR法第一種指定化学物質から除外されたアセトニトリルを加えても取扱量および大気中の排出量は、それぞれ7.8トンおよび0.3トンと、前年度と同程度の低い水準を維持しています。報告品目以外の化学物質についても、関連法規制を遵守し、適正に化学物質管理を行っています。引き続き適正な化学物質管理により、環境中への排出抑制に取り組んでいきます。
PCB含有廃棄物については、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」を遵守し、適正に処分を行っています。2025年3月末現在、保管している高濃度および低濃度PCB廃棄物は無く、低濃度PCBを含有する2台の変圧器(使用中)のみ保有しています。使用中の2台の変圧器についても、上記法律に定められた2027年3月31日までの処理期限内に、低濃度PCB廃棄物の処分許可を有している処理業者に委託し、適正に処分する予定です。
| PCB廃棄物 | 種類 | 分類 | 台数 |
|---|---|---|---|
| 高濃度PCB廃棄物 (PCB濃度:0.5%超) |
コンデンサなど | 使用中 | 0 |
| 保管 | 0 | ||
| 低濃度PCB廃棄物 (PCB濃度:0.5%以下) |
変圧器など | 使用中 | 2 |
| 保管 | 0 |
放射性同位元素等の管理については、「放射性同位元素等の規制に関する法律」に基づき適正に行っており、その結果を放射線管理状況報告書として原子力規制委員会に毎年度報告しています。
創薬研究および生産活動において使用する遺伝子組換え生物および病原体等については、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」および「感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」などの関連法令に基づいて定めた社内規程を遵守することによって、環境中への拡散や漏洩を未然に防止しています。また、これらの研究試料の適切な利用を推進するため、バイオセーフティに関する社内委員会が実験従事者の教育訓練や実験申請の審査を継続して実施しています。
工場および研究所では、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、下水道法、土壌汚染対策法、化学物質排出把握管理促進法など関連法規を遵守し、さらに各自治体と公害防止協定を結び、環境への影響を低減させています。
大気汚染の指標として窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)および煤塵を測定しています。2024年度のNOx排出量は6.0トンと、前年度と同程度の低い排出量を維持しています。当社は硫黄分濃度が高い燃料(重油や石炭など)を使用する設備がないことから、SOx排出量は0.0トンと、非常に低い水準を維持しています。また、2024年度の煤塵排出量は0.3トンと、前年度と同程度の排出量でした。
水質汚濁を防止するため、工場および研究所の排水は、関連する法規制の基準に加えて自治体との協定あるいは当社独自の上乗せ基準を設けて管理しています。フジヤマ工場では公共下水道が整備されておらず、事業活動で生じた廃水は、敷地内の処理施設で沈殿処理、活性汚泥処理、pH調製後、消毒処理などを行い、水質を確認した上で河川に放流しています。山口工場では敷地内の処理施設で消毒などの1次処理後、工業団地内の処理施設で2次処理が行われ、河川に放流しています。2024年度の公共河川に放流した排水のBOD(排水の水質を示す指標)は、0.14トンと、低い排出量を維持しています。2024年度、フジヤマ工場、山口工場および筑波研究所から河川または下水道に放流する排水について、全排水毒性試験(WET試験、ミジンコ、藻類、魚類の生物応答を利用した毒性試験)を実施し、水生生物に有害な影響がないことを確認しました。なお、2025年度までに工場および研究所の全5拠点でWET試験を実施します。
万が一、有害物質を含んだ廃水が排水系統に流れてしまった場合に備え、廃水を貯留するための貯留槽を設置するとともに、特に高活性医薬品原薬を含む廃水については専用の回収タンクを設け、排水系統からの切り離しを行っています。
| 放流別 | 対象範囲 | 単位 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| BOD | 全体 | 生産事業所、 研究所 |
トン | 1.3 | 1.2 | 0.79 | 0.77 |
| 公共下水道 | 1.1 | 1.0 | 0.66 | 0.64 | |||
| 公共河川 | 0.22 | 0.15 | 0.12 | 0.14 |
土壌汚染の防止については、有害物質の管理を徹底するとともに、危険物や有害物質を含む試薬について、保管棚内の試薬瓶の転倒防止対策を実施しています。また、排水管の定期的な漏洩点検や地震に強いフレキシブル配管への置き換えを進めています。万が一、土壌汚染を確認した場合は行政と協議を行い、拡散防止、浄化対策などの適切な処置を実施します。
近年、地球温暖化による異常気象が頻繁に起きているため、それらに起因する事故や緊急事態を想定し、各種マニュアルを策定するとともに、訓練を通して環境への影響を最小限に留めるよう努めています。また、水質汚濁や土壌汚染につながる事故・緊急事態に備え、毎年訓練を実施しています。
当社事業が環境に及ぼす影響をライフサイクルアセスメント(LCA)の一種である「Life-cycle Impact assessment Method based on Endpoint modeling (LIME) 3」を用いて金銭的価値に換算しました。当社の事業活動を、人の健康、社会資産(化石燃料や鉱物資源の消費による影響)、生物多様性および1次生産(土地や森林の利用および廃棄物による影響)の4つの被害評価に分けて評価したところ、社会資産の消費による環境影響(358百万円)が最も高く、ついで人の健康(76百万円)、生物多様性(59百万円)、1次生産(0.6百万円)の順となりました。当社事業の環境影響の主な要因は、事業活動に必要な資源や原材料等のインプットでは電気や都市ガスなどのエネルギー消費が、事業活動で発生するアウトプットでは温室効果ガス排出量でした。本結果を踏まえ、環境影響の低減に取り組んでまいります。
今回は簡易LCAによる工場および研究所などの事業所単位の環境影響の定量化でしたが、今後、製品毎に簡易LCAを行い、環境影響を評価していきます。
当社主力工場であるフジヤマ工場では、敷地内に甲子園球場にほぼ匹敵する緑地(36千m2)を有しています。2017年から環境マネジメントシステム(ISO14001)に基づく環境目標として、野鳥調査を通じた保全活動(地域貢献活動)を採用しています。毎年、春の繁殖期と越冬期に、日本野鳥の会に調査*(年間最大4回)を依頼し、その結果をもとに生物多様性の豊かさを守る取り組み(意図的に草刈りをしない緑地帯の設定、野鳥が好む樹木の植樹、池や水路の整備など)を行っています。観察された野鳥の種類および総数については、8年間で大きな変化はなく、当社の生産活動が自然に大きな影響を与えていないことが読み取れます。本結果は富士宮市にも共有し、地域の生物多様性に関する保全活動に役立てています。
フジヤマ工場における野鳥調査

工場内の水路(野鳥の水飲み場)
メジロやヒヨドリが好む椿の植樹
ノスリ(タカ目タカ科)
2024年12月観察
草地と雑木林
草地に住み着くキジ(キジ目キジ科)
2024年5月観察