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医療アクセスの向上

アンカーリンク用

小野薬品工業株式会社 経営企画部サステナビリティ推進室, 小野薬品工業株式会社 広報部社会貢献推進課, system

医療アクセス向上のための活動方針

医療の発展が目覚ましい現代においても、有効な治療法が存在しない疾患が多くあります。また、低所得国および低中所得国などでは、医療インフラの未整備や貧困などが原因で、必要な医療を受けることが困難な方が数多くいます。
当社は「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という企業理念の下、「革新的な医薬品の研究開発」、「医療基盤の強化」に取り組むことにより、医療アクセスの向上を目指しています。
「革新的な医薬品の研究開発」では、がんをはじめとしたNCDs(非感染性疾患)のうち、いまだ医療ニーズが満たされない疾患や希少疾患のための治療薬の研究開発に積極的に取り組んでいます。また、欧米やアジアをはじめとして、世界中の患者さんに新薬を提供できるように取り組みを強化しています。
「医療基盤の強化」では、NPOや公的機関・製薬企業等とのパートナーシップにより、低・中所得国の医療人材育成や医療環境整備などに中長期的に取り組んでいます。

推進監督体制

当社は医療アクセスの向上を、マテリアリティ「社会的信頼の向上」に含まれるテーマの一つとして定め、取締役会および経営会議において目標と進捗を管理しています(こちら)。また、実行面においては、サステナビリティ戦略会議のマネジメントの下、各部門の委員で構成される社会貢献推進委員会が中心となり推進しています。

小野薬品工業株式会社 経営企画部サステナビリティ推進室, 小野薬品工業株式会社 広報部社会貢献推進課, system

革新的な医薬品の研究開発

当社は「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という企業理念のもと、「病気で苦しむ人を救いたい」という想いを実現するため、不可能と思われていた革新的な新薬を次々と創出してきました。私たちはこれからも、世界のトップサイエンティストと協働して革新的な医薬品の研究開発に挑戦し、医薬品を安心・安全・適切に患者さんに提供することで人々の健康に貢献するとともに、責任ある事業活動を通して、持続可能な社会の実現に向けて挑戦し続けます。
当社の事業活動の詳細につきましてはこちらをご覧ください。

希少疾患・小児疾患のための医薬品開発

希少疾患や小児疾患のための医薬品開発は、医療アクセスの向上にとって非常に重要と考え、以下のように取り組んでいます。

希少疾患に対する取り組み(日本国内の状況 2025年4月1日現在)
製品名 適応症* 希少疾病用医薬品指定日 開発状況
オプジーボ点滴静注 悪性黒色腫 2013.06.17 承認済
ホジキンリンパ腫 2016.03.16 承認済
悪性胸膜中皮腫 2017.12.01 承認済
原発不明癌 2021.3.11 承認済
悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫を除く) 2023.2.22 承認済
根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍 2023.5.23 承認済
治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌 2024.9.20 申請中
デムサーカプセル 褐色細胞腫におけるカテコールアミン分泌過剰状態の改善並びにそれに伴う諸症状の改善 2015.05.25 承認済
カイプロリス点滴静注用 再発又は難治性の多発性骨髄腫 2015.08.20 承認済
オノアクト点滴静注用 生命に危険のある下記の不整脈で難治性かつ緊急を要する場合:心室細動、血行動態不安定な心室頻拍 2016.08.24 承認済
メクトビ錠 NRAS又はBRAFV600遺伝子変異陽性の悪性黒色腫 2013.12.4 承認済
ビラフトビカプセル BRAFV600遺伝子変異陽性の悪性黒色腫 2013.12.4 承認済
BRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌 2024.6.19 申請中
ベレキシブル錠 中枢神経系原発リンパ腫 2019.08.20 承認済
原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫 2019.11.19 承認済
  • 希少疾病用医薬品指定を受けた際の効能又は効果
小児疾患に対する適応取得の取り組み(日本国内の状況 2025年4月1日現在)
製品名 適応症 開発状況
オノンドライシロップ 気管支喘息
アレルギー性鼻炎
承認済
イメンドカプセル 抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む) 承認済
プロイメンド点滴静注用 抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む) 承認済
オレンシア点滴静注用 多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎 承認済
デムサーカプセル 褐色細胞腫のカテコールアミン分泌過剰状態の改善 承認済
オプジーボ点滴静注 再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫 承認済
ラブドイド腫瘍 フェーズ2
オノアクト点滴静注用 心機能低下例における頻脈性不整脈(上室頻拍、心房細動、心房粗動) 承認済

知的財産権と医療アクセスが困難な国における特許の考え方

当社は、創薬の過程から生まれる様々な知的財産を保護、活用することで、革新的医薬品を継続的に生み出していく一方で、第三者の所有する知的財産を尊重した活動を行っています。また、一部の国では、経済的な理由で医薬品へのアクセスが困難な実態があります。より多くの患者さんに当社の革新的な医薬品を届けるため、国連が定める後発開発途上国*1や世界銀行が定める低所得国*2では特許出願や特許権の行使を行いません。さらに、世界銀行が定める低中所得国*3においても、一部の国を除き特許出願や特許権の行使を行いません。
また、上記の国々において当社特許化合物の熱帯病(NTDs)などの疾患への応用可能性(既存の特許プールの利用や後発品メーカーへのボランタリーライセンスの供与など)についても継続的に検討します。
当社は、感染症の蔓延など、公衆衛生上の国家緊急事態的な状況に陥った場合、選択肢の一つとして強制実施権が許諾されることに理解を示します。また、TRIPS協定(The Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)31条の2に従い、医薬品製造能力が不十分または無い国への医薬品輸出のために強制実施権が許諾されることがあることも認識しており、個々の事案に応じ柔軟かつ適切な特許権の実施許諾を検討します。なお、医薬品アクセスの改善には、強制実施許諾だけでは根本解決にはいたらず、経済格差の是正、医療従事者の育成、医療制度、医療インフラおよび医薬品供給体制の整備など、総合的な取り組みが必要と考えます。

患者支援プログラム

当社は、患者さんが必要な治療を受けられるよう、革新的な医薬品の創出とともに様々な支援を提供することを目指しています。患者支援プログラムは、治療に関する情報提供や経済的支援を通じて、患者さんとそのご家族をサポートすることを目的としています。当社の米国子会社であるデサイフェラ社では米国の患者さんを対象に、「Deciphera Access Point™」を通じて、患者さん一人ひとりが抱える固有の状況を理解し、専任のケースマネージャーが、保険の理解から経済的な問題、治療の開始から継続まで、様々な課題解決をサポートしています。

小野薬品工業株式会社 経営企画部サステナビリティ推進室, 小野薬品工業株式会社 広報部社会貢献推進課, system

医療基盤の強化
~キャパシティビルディング~

世界には、未だ医療インフラが未成熟な国や地域が存在し、必要な医療にアクセスできない方々が数多く残されています。当社は、これらの地域の医療基盤強化(ローカルキャパシティビルディング:現地の力で持続的に医療を届けられる医療基盤の構築)のために、NPOへの支援に取り組んでいます。

2018年度から2021年度に実施した「ONO SWITCH プロジェクト」では、カンボジア、ミャンマー、バングラデシュ、ブータンでの、現地医療人材の育成、現地市民への疾患啓発、不足する医療設備や物資の援助等を行ってきました(詳しくはこちら)。本プロジェクトで支援したNPOの活動によって医療基盤強化に向けた着実な成果が得られました。
本プロジェクトでの学びを踏まえて、2022年度より新たな医療アクセス改善プロジェクト「ONO Bridge Project」を開始しました。

新たなプロジェクトを通して、NPOの施策に必要な資金面の支援だけでなく、医療アクセス課題の社会的認知度向上や、従業員のボランティア活動への参加、当社のノウハウを活かした協業施策等を実施しています。同時に、プロジェクトへの当社の非財務資本のインプットを増やすことにより、社会インパクトの最大化を図るとともに、当社の人的資本等の強化につなげています。例えば、従業員の医療アクセス課題解決に対する理解・共感・挑戦意欲を向上させ、それに伴うミッションステートメントの浸透、エンゲージメント向上を目指しています。また、本プロジェクトを通して、広く世界の患者さんや医療課題を理解する機会とすることで、当社の成長戦略の後押しとなることを目指していきます。

[図] ONO Bridge Project (Bridging the healthcare access gaps)
プロジェクト名に込めた想い
医療と患者さんの架け橋(Bridge)となる患者さんの希望が未来へとつながるように
医療を必要とする人々と 医療を届けたい人がつながり
医療アクセスギャップを越えていくことを目指します

本プロジェクトでは、NPOと協働し、以下の2つのプログラムを実施しています。プログラムを通して、施策に必要な資金面の支援だけでなく、医療アクセス課題の社会的認知度向上や、当社のノウハウを活かした協業施策等を実施していきます。

カンボジア 高度小児医療へのアクセス改善プログラム

ロゴ
パートナー
特定非営利活動法人
ジャパンハート
(以下、JH)
写真

カンボジアでの医療従事者の人・知識不足や農村部における医療アクセス課題(経済力・インフラ・現地慣習)に対して、ジャパンハートと協働し、プログラムを通じて、医療従事者の育成や患者教育を行っていくとともに医療設備の支援などを実施することで、小児がん患者を含めた地域住民の医療アクセス改善を目指し取り組みます

活動の詳細については以下をご覧ください
カンボジア 高度小児医療へのアクセス改善プログラム(概要と進捗)
対応するSDGs
3.4
2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。
3.8
全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。
3.c
開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において保健財政及び保健人材の採用、能力開発・訓練及び定着を大幅に拡大させる。
カンボジアの医療アクセス課題と、ジャパンハートの活動
写真
名称
Japan Heart Children's Medical Center
(JHCMC)
設立年
2016: JHCMC設立
2018: JHCMC増築(小児がん病床数増加)
スタッフ数
131名(2024年3月現在)
病床数
94床(大人: 39床/ 小児: 55床)
診療科
内科、小児科、産婦人科、小児血液腫瘍科、小児外科
診療実績
診療: 成人20,132件、小児3,859件
入院: 成人947件、小児268件
手術: 成人1,022件、小児275件
※2023年度

世界保健機構(WHO)は、高所得国では小児がん患者の80%が寛解を迎える一方、低・中所得国では寛解する患者は30%に満たないと指摘しています。また、アジア圏(東南アジア・南アジア・南中央アジアを含む地域)においては、小児がん患者の半数近い約49%が診断を受けていないと見積もられています*。

小児がん患者の寛解率

グラフ

カンボジアにおいても、高度医療にアクセスできない小児患者さんが多く残されます。
その主な原因には、高度医療を提供できる医療機関や医療従事者の不足があります。特にカンボジアは過去の虐殺や内戦などの歴史の影響によって、次世代の医療者を育成する熟練の医療者が不足し、将来も医療アクセス課題が残ってしまう可能性があります。その他にも、地域住民の経済力、受診習慣、医療への信頼の不足が、医療アクセスの障壁となっています。

ジャパンハートは、カンボジアカンダール州ポンネルー地区にジャパンハートこども医療センターを独自で開院し、小児がんなどの患者さんに無償で高度医療を提供しています。また、その活動を通じて現地の医療従事者の育成を行っています。さらに、同院はポンネルー地区の地域医療体制の構築に取り組むとともに、地区内での無償巡回診療を行っています。

  • 日本では2014年時点で人口1,000人あたり2.3人の医師がいますが、カンボジアでは2014年時点で人口1,000人あたり医師は0.2人しかいません。人口1,000人あたりの一般病床数は、2016年に日本では13.1床あったのに対し、カンボジアでは0.9床しかありません*。
  • 例えば、ジャパンハートこども医療センターでは、現在、ひとりの小児がん患者の治療におよそ80〜100万円がかかっています。同国の平均年収は1,625ドル(約22万円。2021年、世界銀行調べ)であり、標準的な小児がんの治療は同国の一般的な家庭ではとても賄いきれません*。
  • カンボジアで小児がん専門の診療科を持つ医療機関は少なく、特に小児固形がんの治療を専門的に行える医療機関は非常に限られるため、カンボジア全土よりジャパンハートこども医療センターに小児固形がんの患者が集まってきております。
当社が支援するプログラム
<対象地域>

対象地域:カンボジア カンダール州ポンネルー地区および周辺の農村地区

<支援期間>

2022年~2027年

<課題・対策・目標>
1.熟練の医療従事者の育成
課題
  • ジャパンハートこども医療センターの現地医療者が、日本人のサポートなく診療を行い、現地の医療者によって次の医療者を育成できるようになるためには、より高度で幅広い知識と経験を積む必要がある。同院はカンボジア国内でも限られた高度医療を経験できる施設であるものの、同院のみでは臨床経験が限られる。また、先進国の医療設備や環境の中で行われる高度医療は、同院では経験できない。
  • 同院の現地看護師は、高度な看護ケア(例えば術後人工呼吸器管理下の患者さんケア等)を行う知識と技術が不足している。
  • 同院には、現地の放射線技師がおらず日本人技師が診療にあたっている。そのため、現地技師の育成が進んでいない。
対策
  • 医師の育成:
    1. 日本の医療機関(独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター)にて、小児患者への高度な医療を学ぶための研修を行う(5カ月間)。
    2. カンボジアにある他の医療施設での研修により、臨床経験の幅を拡げる。
    3. 国際がん学会へ参加など、最新の知見を得る機会を作る。
  • 看護師の育成:
    1. カンボジアにある他の医療施設での研修により、術後管理を中心とした高度医療の臨床研修を行う。
    2. 国際がん学会への参加など、最新の知見を得る機会を作る。
  • 現地の放射線技師の採用:現地の放射線技師を採用する。
目標
  • 医師の育成:
    1. 来日研修:1名
    2. カンボジア他院での研修:2名
    3. 国際がん学会への参加:5名
  • 看護師の育成:
    1. カンボジア他院での研修:5名
    2. 国際がん学会への参加:5名
  • 放射線技師の採用:1名
2.農村部の医療アクセスの改善
課題
  • 農村部にもヘルスセンターという保健所のような役割を担う公立の医療施設があるが、提供できる医療が限られるため、患者さんは日常的に公立の医療施設を利用することはまれである。また、近隣に医療設備の整う病院がないため、地域住民には定期的に病院に通う習慣が浸透しておらず、医療への信頼も十分ではない。
対策
  • ジャパンハートこども医療センターから離れた農村地区の核となる公立の医療施設で無償出張診療を実施する。ジャパンハートこども医療センターのスタッフ(医師・看護師等)を数日間派遣し、診療活動および手術などを実施する。診療や手術などを通じて患者さんへ疾患啓発を行うとともに、現地スタッフと協力して医療を実施することで医療従事者の育成や、医療への信頼に繋げる。
目標
  • 無償出張診療:年8回実施、現地での診療および手術件数:50件(2024年4月~プログラム終了まで)
    • 2024年3月までは、農村地域における月1回の無償巡回診療の実施を目標としていたが、2024年4月より、手術を含む無償出張診療に活動を一部変更したため、以上のように目標が修正となっている。
3.高度医療設備の拡充
課題
  • ジャパンハートこども医療センターは、小児患者に高度医療を提供できるカンボジア国内では限られた施設であるものの、先進国と比較すると医療設備が十分ではない。
  • X線透視設備がないために、内科系疾患(腸重積等)の診断ができない場合や、本来X線透視室が必要な手術をレントゲン設備で代替するため患者さん負担が大きくなってしまうといった課題がある。
対策
  • X線透視設備の導入
目標
  • X線透視機器を購入し、X線透視室を整備する。
<進捗>
取り組み 目標
(2022年度~2026年度)
2022年度
(~2023年3月)
2023年度
(2023年4月~2024年3月)
2024年度
(2024年4月~2025年3月)
状況
熟練の医療従事者の育成
  1. 医師の育成
  1. 来日研修:1名
  1. 医師1名が、日本の医療機関にて5か月間の臨床研修を実施
Completed
  1. カンボジア他院での研修:2名
  1. 医師1名がカンボジアの医療機関にて3ヶ月間の麻酔の臨床研修を実施
  1. 医師2名がカンボジアの医療機関にて研修を実施
Completed
  1. 国際がん学会への参加:5名
  1. 医師1名が、シンガポールの学会へ参加
  1. 医師2名が、シンガポールの学会へ参加
  1. 医師2名が、日本で開催された国際小児がんの学会へ参加
Completed
  1. 看護師の育成
  1. カンボジア他院での研修:5名
  1. 国際がん学会への参加:5名
  1. 看護師2名が、シンガポールの学会へ参加
  1. 看護師1名が、シンガポールの学会へ参加
on schedule
  1. 放射線技師の採用:1名
  1. 放射線技師の採用活動を開始
  1. 放射線技師の採用活動継続中
  1. 放射線技師の採用活動継続中
農村部の医療アクセスの改善
  1. 無償巡回診療
    1. 月1回(~2024年3月)
  1. 無償の巡回診療を3回実施し、143人に無償診療を提供。
  1. 無償の巡回診療を7回実施し、522人に無償診療を提供
Completed
  1. 無償出張診療・手術
    1. 年8回の派遣実施、手術件数:50件の実施(2024年4月~プログラム終了まで)
  1. 2つの農村地区(クロッチュマー・チャムカルー)へ出張診療を計5回実施し、317名の診療と85件の手術を実施
on schedule
高度医療設備の拡充
  1. X線透視室を導入
  1. X線透視設備の導入に向け、手術室の工事が完了
  1. X線透視機器(Cアーム)の設置および稼働に伴う防護服等の準備が整い、2024年1月より稼働
  1. 適応となる患者にて稼働
Completed
<各年度の活動詳細>
2024年度の活動
1.熟練の医療従事者の育成
  • 医師・看護師の育成:
    1. 医師の国内研修:
      1. カンボジア人医師2名がカンボジア国内の医療機関(アンコール小児病院)にて臨床研修を実施しました。臨床研修の内容は小児救急救命処置に関するトレーニングプログラムが行われ、小児特有の状況に対応するための知識や技術習得につながりました。
      写真
    2. 医師の国際がん学会への参加:
      1. 日本(横浜)で開催された国際小児がん学会アジア大会(SIOP Asia)へ、ジャパンハートの現地医師2名が参加しました。学会にて症例発表を行うとともに、医療者との交流を通じて、多くの学びと刺激の機会になりました。
      写真
  • 放射線技師の採用:現地人技師の採用活動につきましてカンボジアで主流となるSNSを活用した採用活動をメインに教育機関への声掛け等も行っていますが、カンボジアでは放射線技師を育成する教育機関が限られ、人材も少ないため、採用が難しい状況です。引き続き様々な方法で採用活動を進めるとともに院内でのスタッフ育成も含めて検討していきます。
2.農村部の医療アクセスの改善
  • 2024年度はジャパンハート子ども医療センターから2時間ほど離れたクロッチュマー地区とチャムカルー地区の農村部にある2施設の病院に計5回医療スタッフを派遣し、無償の診療(317名)および手術(85件)を提供しました。診療を通して患者さんへの疾患啓発を行うことで、悪化を予防するとともに、手術適応となる患者さんには現地スタッフと協力して手術を実施し、これまで手術が難しかった患者さんを救うことに繋がっています。また、現地スタッフとの協力により医療活動を行うことで医療従事者育成にも貢献し、患者さんや地域の方々からの医療への信頼も少しずつ得られています。
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3.高度医療設備の拡充
  • 2023年度は外科手術用X線撮影装置(Cアーム)を導入し、2022年度に完成したX線対応の手術室に設置しました。
    そのほか、備品の準備や、研修を実施するなど体制を整え、2024年1月より本格的に稼働を開始しました。これまで設備がないことで手術を行うことが困難だった患者さんへの医療提供が可能となり2025年度も多くの患者さんに役立てられています。
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ミャンマー 母子保健改善プログラム

ロゴ
パートナー
特定非営利活動法人
ピープルズ・ホープ・ジャパン
(以下、PHJ)
写真

ミャンマーにおける妊産婦死亡率の課題に対してPHJと協働し、母子保健推進員の育成をはかることで、地域住民の出産リスクへの理解や、地域住民と助産師を繋げる地域の保健サービスネットワークの強化を支援し、妊産婦の母子保健サービスへのアクセス向上を目指します。

活動の詳細については以下をご覧ください
ミャンマー 母子保健改善プログラム(概要と進捗)
対応するSDGs
3.1
2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する。
ミャンマーの医療アクセス課題とPHJの活動

ミャンマーの妊産婦死亡率は250人/10万人といわれ(UNICEF 世界子供白書2021より)、「SDGs 3.1:2030年までに世界の妊産婦の死亡率を70人/10万人未満に削減する」の目標と比較し大きなギャップがあります。その原因のひとつは、医療従事者の介助によらない出産です。さらに、その要因として、医療者の不足、医療機関の適切な設備不足や物理的なアクセスの壁、伝統的な自宅出産の風習、地域住民の出産に伴うリスクの理解不足等があります。 また、この課題は農村地域でより顕著で、ミャンマー国内でも医療アクセスの格差があります。

妊産婦の死亡率(出生100,000人対)

グラフ

PHJはこの課題に対し、2014年から約6年間ネピドー特別行政区タッコン郡で取り組み、農村地での母子保健サービスの利用を促進する成果を上げています。PHJはここで得られた効果的なモデルを、2020年からネピドー特別行政区レウェイ郡に展開しています(当社はこの活動の一部を支援してきました)。

  • 引用:PHJ 2022年度 アニュアルレポートより抜粋

PHJは活動を通じて、特に農村地でサービス利用率の低い4つの指標(妊婦健診受診率、医療者介助分娩率、施設分娩率、産後健診受診率)の向上を目指しています。

事業対象地域の母子保健サービス利用率(プログラム開始前)

当社が支援するプログラム
<対象地域>

対象地域:ネピドー特別行政区レウェイ郡

<支援期間>

第一期活動期間:2023年1月~2024年12月
第二期活動期間:2025年1月~2026年12月

<課題>
  • 地域住民の出産リスクに対する知識不足:妊娠高血圧や産後出血など、出産に伴うリスクの適切な知識が不足しており、妊娠期や出産時の危険兆候の発見の遅れや受診判断の遅れにつながっている。
  • 保健サービスへのアクセス困難:農村地では、地域住民と助産師など保健サービスとのネットワークが不充分で、母子保健サービスの利用状況に市街地との顕著な格差が存在する。
<第一期>
対策
  • 母子保健推進員*の育成:母子保健推進員を育成し、活動のモニタリング及び指導、半年後の再研修などを支援する。
    • 母子保健推進員とは、保健省が定める2日間の研修を受講後、助産師の監督・指導の下で、保健教育や妊産婦の家庭訪問などを行い、地域住民と保健サービスをつなぐ橋渡し役を担うボランティアです。
目標
  • 母子保健推進員を新たに育成:2024年12月までに600人
  • 育成した母子保健推進員への再研修:2024年12月までに300人
    母子保健推進員は、1年間のおおよその出産数を基に、妊婦5人に対して1人の割合で対象地域の全ての村(178村)に配置する計画
<進捗>
取り組み 目標
(2022年度~2024年度)
2022年度
(2023年1月~3月)
2023年度
(2023年4月~2024年3月)
2024年度
(2024年4月~12月)
状況
母子保健推進員の育成
  1. 母子保健推進員を新たに600人育成
    1. 保健省が定める2日間の研修を実施
    2. 対象地域のすべての村(178村)に、妊婦5人に1人の割合で母子保健推進員を配置
  1. 育成対象となる401人の候補者を選定
  2. 母子保健推進員を養成する現地医療従事者55人に養成者研修を実施
  1. 母子保健推進員を新たに425人育成
  2. 育成研修は養成者研修を受講した現地医療従事者が実施
  1. 母子保健推進員を新たに140人育成
Completed
  1. 育成した母子保健推進員300人への再研修を実施
  1. 再研修について、レウェイ郡保健局と準備・調整
  1. 育成した母子保健推進員360人への再研修実施
Completed
  1. 活動のモニタリングおよび指導を毎年実施
  1. 郡内の農村部にて助産師と母子保健推進員が合計150回の保健教育を実施
  1. 郡内の農村部にて助産師と母子保健推進員が合計477回の保健教育を実施
  1. 郡内の農村部にて助産師と母子保健推進員が合計392回の保健教育を実施
  2. 郡内の補助助産師36人にスキルモニタリング、38人に再研修を実施
Completed
<各年度の活動詳細>
2024年度の活動

2024年度は140人の母子保健推進員を育成し、育成研修を修了した母子保健推進員は助産師や補助助産師と連携しながら、郡内の農村部にて妊婦・産後の女性の家庭訪問(1回以上/月)や健診の受診促進や感染症予防の啓発、子どもの予防接種サポートなどの活動の他、合計392回の保健教育を実施しました。
また、これまで育成した母子保健推進員のうち360人に対し、知識と技術の再習得を目的として、適切な保健知識の再確認、保健教育・家庭訪問の実施方法などの再研修を行っています。
さらに、助産師が絶対的に不足している中、地域の母子保健(妊婦健診、産後検診、出産介助等)で大きな役割を果たす補助助産師(レウェイ郡:全45人)に対しても、知識・スキル向上を目的としたスキル・モニタリング(36人)と再研修(38人)を実施し、地域の母子保健を担う保健人材全体の育成を行いました。

写真
妊産婦の保健教育
写真
補助助産師のスキルモニタリング
<第二期>(2025年1月~)
1.妊産婦と新生児の保健サービスへのアクセス向上
対策
  • 母子保健推進員の能力向上支援のための再研修を行うとともに、母子保健推進員による保健教育や妊産婦の家庭訪問、医療施設での啓発活動などを実施する
目標
  • 母子保健推進員の再研修:2026年度までに450人
  • 保健教育・啓発活動:2026年度までに1,000回
2.地域の保健システム強化
対策
  • 技術支援としてレウェイ郡保健局でのモニタリング評価会議の実施や、郡保健局の保健スタッフへの技術学習の実施を支援する。
  • 地域医療関係者会議を定期的に実施し、郡保健局、医療従事者、コミュニティの連携を促進させ、地域全体で妊産婦や新生児のケアが実施される環境の構築を目指す。
目標
  • レウェイ郡保健局でのモニタリング評価会議、技術学習:2026年度までにモニタリング評価会議2回、技術学習18回
  • 地域医療関係者会議:2026年度までに農村地の40医療施設にて8回ずつ
<進捗>
取り組み 目標
(2025年度~2026年度)
2025年度
(2025年1月~12月)
2026年度
(2026年1月~12月)
状況
妊産婦と新生児の保健サービスへのアクセス向上
  1. 育成した母子保健推進員の再研修:450人
on schedule
  1. 母子保健推進員による保健教育や妊産婦家庭訪問、医療施設での啓発活動:1000回
on schedule
地域の保健システム強化
  1. レウェイ郡保健局でのモニタリング評価会議:2回、技術学習:18回
on schedule
  1. 地域医療者連携会議:40の医療施設にて8回ずつ
on schedule
過去の医療アクセスプロジェクトにつきましては以下をご覧ください
ONO SWITCH プロジェクト(2018年度~2021年度)

当社では、医療システム支援と働き方改革の両方を推進させるための取り組みとして、2018年度~2021年度まで、ONO SWITCH プロジェクトに取り組みました。本取り組みは、働き方改革の推進により削減した時間外手当に応じた金額を医療に関係する以下のNPO・NGOに寄付する取り組みで、働き方改革の推進および世界の医療と健康に貢献し、「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という企業理念の具現化をより一層推進することを目的としています。

~プロジェクト名称とコンセプト~
Save the World by our work style ImprovemenT and CHange
(私たちの働き方の改善と改革を通して世界を救う)
働き方をスイッチする、働き方改革で得られた原資を寄付にスイッチする、働き方見直しのスイッチを入れるという意味も込めています。
各年度の実績は以下よりご確認ください。
小野薬品工業株式会社 経営企画部サステナビリティ推進室, 小野薬品工業株式会社 広報部社会貢献推進課, system

Access Acceleratedイニシアチブへの参画

当社は、低所得国・低中所得国における非感染性疾患(Non-Communicable Diseases、以下 NCDs)の予防、治療およびケアの推進を目的としたグローバルパートナーシップである「Access Accelerated」に2023年より参画しています。
Access Acceleratedは、2017年の世界経済フォーラムにおいて立ち上げられた国際的なイニシアチブで、日米欧の10社以上の製薬企業が参画しています。世界銀行グループなどの団体と連携し、低所得国・低中所得国において2030年までにNCDsによる早期死亡件数の3分の1を減少させるという国連の持続可能な開発目標の達成を目指しています。
Access Acceleratedの活動の詳細は、下記ウェブサイトをご覧ください。
https://accessaccelerated.org/

小野薬品工業株式会社 経営企画部サステナビリティ推進室, 小野薬品工業株式会社 広報部社会貢献推進課, system