当社は、地球温暖化などの気候変動を人々の健康への大きな脅威ととらえるとともに、事業活動の継続に影響を与える重要課題と認識しています。このため全社横断組織である環境委員会およびそのもとに設置したカーボンニュートラル分科会が中心となり、脱炭素社会の実現に向けた様々な取り組みを進めています。
気候変動に関するリスク・機会については、環境委員会およびTCFDワーキンググループが中心となり調査を行い、事業に影響を及ぼすと考えられるリスク・機会を把握し、分析・評価を行っています。詳細はTCFD提言に基づく情報開示をご参照ください。
当社は中長期環境目標の達成に向けて、活動を推進しています。
| 中長期環境目標 | 2024年度目標と実績 | |
|---|---|---|
| 温室効果ガス排出量 (スコープ 1+2) |
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| 購入電力に占める 再生可能エネルギー比率 |
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| 温室効果ガス排出量 (スコープ 3) |
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2024年度は、中長期目標の達成に向けて設定している年度目標を全て達成しました。スコープ1+2の温室効果ガス排出量には、ボランタリークレジット活用によるCO2オフセット量(カーボンニュートラル都市ガス購入分)は含めていません。ボランタリークレジットによるCO2オフセット量を反映した場合の2024年度のスコープ1+2温室効果ガス排出量は2.0千t-CO2、2017年度比93.4%削減となります。なお、スコープ3については、カテゴリ1および9、15の算定に用いる当社主要取引先および医薬品卸等の温室効果ガス排出量が算定時点で未公表のため、前年度のデータを用いて算定しています。
温室効果ガス排出量(スコープ1+2)*1

エネルギー使用量

電力消費量と再生可能エネルギー利用率
当社では、昨今のエネルギー市場動向やコスト、排出係数の変動予測などを踏まえた温室効果ガス排出量削減方針を策定しています。施策の優先順位は「回避(エネルギーを使用しない仕組み作り)」「削減(省エネルギー活動の推進)」「代替(再生可能エネルギーへの切り替え等)」「相殺(クレジット活用によるオフセット)」としています。
また、低炭素投資・気候変動対策推進を目的に、社内で独自に二酸化炭素(CO2)排出量に価格を設定し、投資判断に活用するインターナルカーボンプライシングを導入し、脱炭素社会の実現に向けた投資を推進しています。
スコープ1+2温室効果ガス削減ロードマップ

デマンドレスポンスは、『エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)』の「電気の需要の最適化」として位置づけられています。当社は、2020年度より通常時の節電に加え、電力需給逼迫時に電力会社からの要請(デマンド)に応じて節電や蓄電した電力活用(レスポンス)をすることで、電気需給が最適なバランスになるように努めています。
山口工場では、効率的にデマンドレスポンスに対応するため、NAS電池への充放電を遠隔で行えるようシステムを改修しました。
「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)」に基づき、対象設備の把握、簡易点検・定期点検、記録作成、漏洩量の算定などを実施しています。2024年度のフロン類算定漏洩量は0.6千t-CO2でした。今後も漏洩防止に努めるとともに、フロン類排出抑制に向けてノンフロンや低地球温暖化係数冷媒を使用した機器の導入を進めていきます。また、オゾン層破壊物質を含む特定フロン使用機器の全廃も並行して進めています。
より環境に配慮した医薬品原薬の製造工程開発に取り組むために、研究開発段階からグリーンサステナブルケミストリー(「Green Sustainable Chemistry」以下、GSC)の考えを取り入れています。GSCとは、「人と環境にやさしく、持続可能な社会の発展を支える化学」と定義されます。当社では、原薬製造効率の評価指標としてPMI(Process Mass Intensity)*を活用し、研究開発段階から環境負荷低減を意識した医薬品原薬の製造工程開発に取り組んでいます。
医薬品製造で主流の「バッチ生産」は、各工程が独立していて、一工程毎に生成物を単離して次の工程に移る、というステップを繰り返して医薬品が製造されます。一方で「連続生産」では、コンパクトな装置を連結して複数の工程を一連化し、一定時間、各工程を管理し続けながら、継続して生産が行われます。このため「連続生産」は省スペース化だけでなく、品質の安定化などのメリットもあります。当社においても、生産工程の「湿式造粒」をバッチ生産方式から連続生産方式への変更を進めており、開発に必要な原料(重量)をバッチ生産方式と比較して約13%削減*できる見込みです。また、連続生産設備は省スペース化ができると期待されることから、設備稼働に関するエネルギー使用量についても24.3%削減できる見込みがあると試算しています。今後はさらに連続生産の適用範囲を拡大していくことで、さらなるエネルギー削減や原料削減を目指していきます。
当社が現在取り組んでいる連続生産の工程
グリーン電力証書
カーボンオフセット都市ガス供給証明書
スコープ3排出量の削減にはビジネスパートナーとの協働が不可欠です。当社は、サプライチェーン上の取引先企業とともに、自然環境や人権・労働環境などサステナビリティに関する取り組みを進め、社会課題の解決を目指しています(詳細はこちら)。
当社物流センターからの医薬品卸業者までの物流においては、2023年1月よりGDPガイドラインに準拠した共同輸送を4社で開始しました。これにより、医療用医薬品の品質担保の向上だけでなく、積載効率の向上によるトラック運行台数の削減や、CO2排出量の削減も期待されています。
さらに、2024年度には、持続可能な物流体制の強化と「物流2024年問題」への対応を目的として、出荷日を集約して配送頻度を減らす取り組みを開始しました。これにより、輸送の効率化がより一層進み、作業員の働き方改革や、トラックおよびドライバーの安定確保、CO2排出量の削減にもつながっています。
また、温室効果ガス排出量削減の取組の一環として、2025年4月から東海道・山陽・九州新幹線におけるCO2排出量を実質ゼロにするサービス「GreenEX」の利用を開始しました。「GreenEX」は、CO2フリー電気*を活用することで、東海道・山陽・九州新幹線の移動に伴うCO2排出量を実質ゼロにするサービスです。本サービスの導入により、当社社員の出張に伴うCO2排出量を大幅に削減できます。当社は今後も脱炭素に向けた取り組みを推進していきます。
