Environment 環境 :

脱炭素社会の実現

リード文

当社は、地球温暖化などの気候変動は人々の健康への大きな脅威ととらえるとともに、当社の事業活動の継続に影響を与える重要課題と認識しています。このため全社横断組織である環境委員会およびそのもとに設置したカーボンニュートラル分科会が中心となり、脱炭素社会の実現に向けた様々な取組を進めています。

小野薬品工業株式会社 経営企画部 兼 CSR推進室, 小野薬品工業株式会社 CSR推進室, system

気候変動に関するリスク・機会の分析・評価

気候変動に関するリスク・機会については、環境委員会およびTCFDワーキンググループが中心となり調査を行い、事業に影響を及ぼすと考えられるリスク・機会を把握し、分析、評価を行っています。詳細はTCFD提言に基づく情報開示をご参照下さい。

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目標と進捗

当社は2023年度に更新した中長期環境目標の達成に向けて、活動を推進しています。

中長期環境目標 2023年度目標と実績
温室効果ガス排出量
(スコープ 1+2)
  • 2025年にカーボンニュートラルを達成(ボランタリークレジットを活用した実質ゼロ)
  • 2035年にゼロ
  • 目標:41%以上削減(17.6千t-CO2
    1. 基準年:2017年
  • 実績:46.2%削減(16.0千t-CO2
購入電力に占める再生可能エネルギー比率
  • 2025年に100%
    1. 対象:自社事業所
  • 目標:40%以上
  • 実績:48.5%
温室効果ガス排出量
(スコープ 3)
  • 2030年に30%削減
  • 2050年に60%削減
    1. 基準年:2017年
  • 目標:13.4%以上削減(65.0千t-CO2
    1. 基準年:2017年
  • 実績:46.7%削減(40.0千t-CO2

2023年度は、中長期目標の達成に向けて設定している年度目標を全て達成しました。スコープ1+2の温室効果ガス排出量にはボランタリークレジット活用によるCO2オフセット量(カーボンニュートラル都市ガス購入分)は含めていません。ボランタリークレジットによるCO2オフセット量を反映すると2023年度のスコープ1+2温室効果ガス排出量は14.4千t-CO2、2017年度比51.8%削減となります。なお、スコープ3については、カテゴリ 1および9の算定に用いる当社主要取引先および医薬品卸のスコープ1+2のデータが算定時点で未公表のため、前年度のデータで算定しています。

温室効果ガス排出量(スコープ1+2)

グラフ
  • 対象拠点:フジヤマ工場/山口工場(2018年度より)/城東製品開発センター/水無瀬研究所//筑波研究所/本社/各支社・営業所等
    温室効果ガス排出量は、地球温暖化対策の推進に関する法律に準拠して算定しています。

エネルギー使用量

グラフ

電力消費量と再生可能エネルギー利用率

グラフ
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削減方針

当社では、昨今のエネルギー市場動向、コスト、排出係数変動予測などを踏まえた温室効果ガス排出量削減方針を策定しています。施策の優先順位は「回避(エネルギーを使用しない仕組み作り)」「削減(省エネルギー活動の推進)」「代替(再生可能エネルギーへの切り替え等)」「相殺(クレジット活用によるオフセット)」としています。
また、低炭素投資・気候変動対策推進を目的に、社内で独自に二酸化炭素(CO2)排出量に価格を設定し、投資判断に活用するインターナルカーボンプライシングを導入し、脱炭素社会の実現に向けた投資を推進しています。

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スコープ1+2 温室効果ガス排出量削減に対する取組

スコープ1+2温室効果ガス削減ロードマップ

図表

削減省エネルギー活動の推進

運用改善
  • 高温排水から熱回収を行い温熱源として使用
  • 設備運転時間や設定温度などの運用見直し
    当社のエネルギー使用量の大半は空調設備によるものです。製品の品質に影響のない範囲で、空調設備の稼働時間や設定温度の見直しを進めています。
    フジヤマ工場では、2022年度より工場内の700か所以上に設置されたエネルギーデータ(電力、熱量、蒸気)収集ポイントを活用し、毎日のエネルギーロスの把握、省エネポテンシャルの抽出を実施しています。データ分析結果および金額ベースでの削減効果を可視化し、従業員と共有することで一人ひとりの意識の向上につながりました。結果として、設備の運用改善等の取組が大幅に進み、2022年度は2021年度比で7.8%削減、2023年度はさらに2.3%のCO2排出量削減につながっています。このような取組が評価され、フジヤマ工場は2023年度「静岡県地球温暖化防止活動知事褒賞」を受賞しています。
省エネルギー設備の導入
  • 照明を蛍光灯からLEDに更新
  • 熱源設備をモジュールタイプヒートポンプチラーに更新
  • 待機電力が極めて低い超高効率型アモルファス変圧器の導入
  • 低風量型(プッシュ・プル型)超高速VAV(可変風量)式局所排気装置の導入
  • 高清浄度エリアを限定できる無菌アイソレータシステムの導入
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モジュールタイプヒートポンプチラー(水無瀬研究所)
写真
低風量型(プッシュ・プル型)超高速VAV(可変風量)式局所排気装置(水無瀬研究所)
デマンドレスポンスの実施

デマンドレスポンスは、『エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)』の「電気の需要の最適化」として位置づけられます。当社は、2020年度より通常時の節電に加え、電力需給逼迫時に電力会社からの要請(デマンド)に応じて節電や蓄電した電力活用(レスポンス)をすることで、電気需給が最適なバランスになるように努めています。

エネルギーの電化
  • 大容量蓄電システム(NAS電池システム)の導入
  • ボイラーを電気式に切り替え
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大容量蓄電システム(山口工場)
フロン管理

「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)」に基づき、対象設備の把握、簡易点検・定期点検、記録の作成、漏洩量の算定などを実施しています。2023年度のフロン類算定漏洩量は〇〇t-CO2で低い水準で推移しています。今後も漏洩防止に努めるとともにフロン類排出抑制に向けて、ノンフロンや低地球温暖化係数冷媒を使用した機器の導入を進めます。並行して、オゾン層破壊物質を含む特定フロン使用機器の全廃も進めています。

環境配慮オフィス設計
  • 環境に配慮したオフィス設計を進めており、東京ビルはCASBEE®(建築環境総合性能評価システム)*1のSクラスを取得しています。米国のオフィスについても、LEED*2のGold認証を取得しているビルを選定しました。また、山口工場の管理厚生棟は省エネ機器を採用した環境に配慮した設計になっています。
  • 建築物の環境性能で評価し格付けする手法。省エネルギーや環境負荷の少ない資機材の使用といった環境配慮はもとより、室内の快適性や景観への配慮なども含めた建物の品質を総合的に評価が行われる。評価結果は5段階で示され、Sクラスは、最高段階の評価である。
  • 非営利団体USGBC(US Green Building Council)が開発および運用を行っている建築や都市の環境についての環境性能評価システム。Leadership in Energy and Environmental Designの頭文字をとり、LEEDと呼ばれている。

研究・生産工程での省資源につながる取組

グリーンサステナブルケミストリーの取組

より環境に配慮した医薬品原薬の製造工程開発に取り組むために、研究開発段階から、リーンサステナブルケミストリー(「Green Sustainable Chemistry」以下、GSC)の考えを取り入れています。GSCとは、「人と環境にやさしく、持続可能な社会の発展を支える化学」と定義されます。当社では、原薬製造効率の評価指標としてPMI(Process Mass Intensity)*を活用し、研究開発段階から環境負荷低減を意識した医薬品原薬の製造工程開発に取り組んでいます。

  • PMIは、原薬製造に要した原料・資材の総重量を製造した原薬の重量で除して算出。
連続生産方式の導入

医薬品製造で主流の「バッチ生産」は、各工程が独立していて、一工程毎に生成物を単離して次の工程に移る、というステップを繰り返して医薬品が製造されます。一方で「連続生産」では、コンパクトな装置を連結して複数の工程を一連化し、一定時間、各行程を管理し続けながら、継続して生産が行われます。このため「連続生産」は省スペース化だけでなく、品質の安定化などのメリットも得られます。当社においても、生産工程の「湿式造粒」をバッチ生産方式から連続生産方式への変更を進めており、開発に必要な原料(重量)をバッチ生産方式と比較し約13%削減*できる見込みです。また、連続生産設備は省スペース化できるが期待されることから、設備稼働に関するエネルギー使用量についても、24.3%削減できる見込みがあると試算しております。今後はさらに連続生産の適用範囲を拡大していくことで、さらなるエネルギー削減や原料削減を図っていきます。

  • 生産工程の一つである「湿式造粒」を連続方式にすることによる原料削減効果を一般的なバッチ方式の装置と比較した数値です。

当社が現在取り組んでいる連続生産の工程

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当社連続生産設備(フジヤマ工場)

代替再生可能エネルギーへの切り替え

設備の導入
  • 太陽光発電設備の導入:本社ビル(2003年度~)、水無瀬研究所(2015年度~)、東京ビル(2017年度~)
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太陽光発電パネル(水無瀬研究所)
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太陽光発電量集計システム(水無瀬研究所)

再生可能エネルギーの調達

  • 再エネ電力メニュー契約による買電:水無瀬研究所(2019年度~)、山口工場(2022年度~)、フジヤマ工場(2023年度~)、筑波研究所(2023年度~)
    なお、フジヤマ工場、山口工場、筑波研究所では、2023年度から購入電力を100%再生可能エネルギー化しています。
  • グリーン電力証書(2018年度~)、J-クレジット(2019年度~)および非化石証書(2021年度~)の購入
    再生可能エネルギーで発電された電力の証書を購入することにより、再生可能エネルギー活用を推進しています。

グリーン電力証書グリーン電力証書

相殺ボランタリークレジット活用によるオフセット

  • カーボンニュートラル都市ガスの導入:筑波研究所(2021年度~)、城東製品開発センター(2021年度~)、山口工場(2023年度~)
    カーボンニュートラル都市ガスは、原料の採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスを、CO2クレジットで相殺(カーボン・オフセット)し、燃焼しても地球規模ではCO2が発生しないとみなす都市ガスです。クレジットは、国際的にも信頼性の高い機関から発行され、地域や生態系に重大な悪影響を及ぼさない(森林プロジェクトの場合プロジェクトにより伐採や森林破壊が回避される)などの導入先の調達要件・品質基準等が満たされたプロジェクトで構成されています。

カーボンニュートラル都市ガス供給証明書カーボンニュートラル都市ガス供給証明書

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スコープ3 温室効果ガス排出量に対する取組

スコープ3排出量の削減にはビジネスパートナーとの協働が不可欠です。当社では、サプライチェーン上の取引先企業と共に、自然環境や人権・労働環境などサステナビリティに関する取組を進め、社会課題の解決を目指しています(詳細はこちら)。また、2023年1月より医療用医薬品の国内物流における共同輸送を開始しており、輸送の効率化によるCO2排出削減も目指しています。

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気候変動対策関連の外部からの評価・表彰

  • 国際環境非営利団体であるCDPが実施している気候変動の評価において、最高評価である「Aリスト」に6年連続選出されました(2018~2023年度)
  • 『エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)』において省エネの取組が進んでいる優良事業者として、資源エネルギー庁より9年連続最高ランクであるSランクの評価を取得しました(2015~2023年度)
  • フジヤマ工場が、工場でのエネルギー消費量などの「見える化」を通じて、従業員の省エネ意識向上や設備運用の改善を進めたことが評価され、「静岡県地球温暖化防止活動知事褒賞」を受賞しました(2023年度)
  • 第5回「ESGファイナンス・アワード・ジャパン 環境サステナブル企業部門(主催:環境省)」において、情報開示の充実度が一定の基準を満たしているとして「環境サステナブル企業」に選定されました(2023年度)
  • 大阪府下の事業所が「おおさか気候変動対策賞」を受賞しました(2021年度)
  • 水無瀬研究所が「おおさかストップ温暖化賞」の大阪府知事賞を受賞しました(2020年度)
  • 地球温暖化防止活動環境大臣表彰(環境省)の「対策活動実践・普及部門」を受賞しました(2019年度)
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