Environment 環境 :

水循環社会の実現

リード文

当社の事業活動、特に研究・生産活動を行うには良質な水が不可欠です。また、当社の事業が地球環境へ負の影響を及ぼすリスクを適切に管理することは重要であり、持続可能な水循環社会の実現に取り組んでいます。

小野薬品工業株式会社 経営企画部 兼 CSR推進室, 小野薬品工業株式会社 CSR推進室, system

水に関するリスクの分析と評価

水に関するリスクについては、環境委員会およびその下に設置している水分科会が中心となり調査を行い、事業に影響を及ぼすと考えられるリスクを把握し、分析、評価を行っています。
また、2022年度には、水関連リスクは事業所ごとの流域によって課題が異なることを考慮してリスクを再整理し、リスクベースアプローチへの転換を図りました。評価は、CEO Water Mandateより発行されたガイドライン「Setting Site Water Targets Informed By Catchment Context: A Guide For Companies」を参考にし、リスクに対応する新たな中長期目標へと更新しました。

主要なリスクと対応

1.水不足リスク
リスク評価
総取水量の95%以上を利用する研究所および生産事業所における水不足リスクの評価は、世界資源研究所の水リスク評価ツール(WRI AQUEDUCT)を用いて実施しています。2022年度末時点で当社の主要事業所は水ストレスが「高い(High risk)」または「非常に高い(Extremely high risk)」に分類される地域での操業を行っておりません。また、各事業所の立地する地域における渇水履歴について、デスク調査および自治体へのヒアリングを行い、自社の研究所および生産事業所における水不足リスクは小さいと評価しました。
自社研究所および生産事業所における水ストレスに関するリスク評価結果(WRI AQUEDUCT)
水ストレス 事業所
低~中リスク 山口工場、城東製品開発センター、水無瀬研究所
中~高リスク フジヤマ工場、筑波研究所
高い または 非常に高いリスク 該当なし
対応
自社事業所が立地する地域において水不足リスクが小さいと評価しましたが、将来にわたって水資源を適切に管理していくために、自社事業所においては水使用の効率化を進め、適切な水使用管理を継続していきます。加えて、地域の豊かな水資源の保全につながる施策を推進していきます。
2.水質汚染リスク
リスク評価
医薬品の研究、製造の過程等で使用される原材料や医薬品有効成分(API)などの化学物質には、人の健康や生態系に悪影響を与えるリスクがあります。万が一、当社の事業活動に伴う水質汚染やそれに伴う危害が発生した場合には、地域のステークホルダーに重大な影響を与えるだけでなく、当社事業にも大きな影響を与える可能性があります(例えば、製品の保険の適用からの除外、補償金額を越える費用負担、法的責任を負う可能性など)。
当社の研究所および生産事業所で使用している物質には、有害性が既知で法規制により管理される物質と、APIのように有害性(特に環境への有害性)が未知なため自主的な管理が必要なものがあり、その特性に応じたリスク管理が必要です。法規制により管理される化学物質については、排水中の濃度をモニタリングし、公開されている有害性情報をもとに生態系へのリスクの有無を評価しています。一方、開発化合物などで環境への有害性が未知であるAPIについては、リスク評価体系を現在構築しています。
対応
引き続き自社の研究所および生産事業所において、使用する有害物質の削減に努めます。法規制で管理される物質については、法規制よりも厳しい管理値での排水管理を行う運用を維持、強化していきます。また、開発化合物など環境有害性が未知な物質については、コンピューターシミュレーションによる定量的構造活性相関(QSAR)により環境有害性を予測するとともに、順次APIの水生生物影響の評価を実施していきます。
3.取引先における水関連リスク
リスク評価
取引先の事業活動に伴うサステナビリティリスクについては、サプライチェーンマネジメントの中でリスク評価するとともに対応を行っています。水関連リスクの評価についても、2026年度までに包括的なリスク管理体制を構築します。
対応
重要な取引先に対して、WRI AQURDUCTを用いて水ストレス、渇水、洪水、水質の水関連リスクを把握した上で、EcoVadis社のサステナビリティ評価システムを活用し、取引先の事業活動に伴う水関連リスクを評価します。取引先の事業活動において水関連リスクが疑われる場合、現地監査により情報を収集し、是正措置を提案します。
4.その他のリスク

台風等による洪水リスクの評価と対応状況については、TCFD提言に基づく情報開示をご覧ください。また、自然災害等発生時のBCP(事業継続計画)についてはこちらをご覧ください。
水に関するリスクと機会、取水量・排水量等に関する詳細はCDP水セキュリティで回答していますので、CDPのホームページからご確認いただけます(CDPのIDが必要です)。

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目標

水循環社会の実現に向けて、2019年度より推進してきた中長期目標を、2022年度にリスク評価結果を踏まえた新たな中長期目標へと更新しました。

水不足リスク
  • 自社事業所の水使用量増加率を売上成長率以下におさえる
    1. 基準年:2017年、目標年:2030年。売上成長率≧水使用量増加率
  • 地域の豊かな水資源の保全につながる施策を推進する
水質汚染リスク
  • 自社工場・研究所の排水の、水生生物影響リスク管理を導入する
    1. 目標年:2025年 影響評価の実施率100%
  • 自社開発品の、水生生物への影響を評価し公開する
    1. 目標年:2030年
  • 自社工場・研究所について法規制より厳しい管理値で排水管理を行う
    1. 現運用を維持・改善。実施率100%
サプライチェーンリスク
  • 重要な取引先に対し水関連リスク評価を実施し、包括的なリスク管理を行う
    1. 目標年:2026年


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進捗

2022年度の取水量は196.4千㎥で、2021年度に比べ23.0千㎥を削減(削減率:10.5%)できました。また、基準年である2017年度に比べ128.7千㎥の削減(削減率:39.6%)となりました。

水使用量削減のための具体的な取り組みとしては、超音波式流量計設置による水使用量の見える化、生産事業所での密閉性の高い扉の導入による防虫用流水トラップの停止、熱排水タンクの設定温度調整による冷却水の削減、製薬用水のタンク滅菌作業の最適化、研究所でのボイラー更新、空冷チラー・全熱交換器への水噴霧停止や水噴霧作動設定温度の変更、高温排水熱回収による冷却水の削減、定期的な漏水点検などの実施が挙げられます。また、事業所の増改築時や設備更新時には、節水型衛生器具を採用しています。

取水量(水資源使用量)

グラフ

排水量

グラフ
  • 水使用量および排水量のデータ集計サイト:フジヤマ工場/城東製品開発センター/山口工場(2018年度より追加)/水無瀬研究所/福井研究所/筑波研究所/本社およびその他の国内営業所(一部テナント含む)

施設別の取水量および排水量(単位:千m3
施設名 流域河川 排水先*1 2017年度 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
取水量 排水量 取水量 排水量 取水量 排水量 取水量 排水量 取水量 排水量 取水量 排水量
フジヤマ工場*2 富士川 河川 205.6 148.6 240.2 178.4 185.0 145.1 157.8 125.0 138.7 110.2 122.9 100.1
山口工場 椹野川 河川 - - 8.2 8.2 18.1 18.1 18.6 17.7 21.6 20.0 22.8 20.9
城東製品開発センター 淀川 下水道 5.5 5.5 6.0 6.0 5.1 5.1 4.6 4.6 3.9 3.9 3.4 3.4
水無瀬研究所 淀川 下水道 51.3 51.3 41.2 41.2 39.1 39.1 33.7 33.7 31.5 31.5 32.2 32.2
福井研究所*3 九頭竜川 下水道 38.7 5.2 31.3 5.0 27.3 5.7 13.7 2.6 6.6 1.9 0.8 0.2
筑波研究所 霞ヶ浦 下水道 8.1 8.1 6.0 6.0 7.1 7.1 7.2 7.2 7.0 7.0 4.7 4.7
本社およびその他の国内事業所(一部テナント含む) 主要事業所の流域河川*4 下水道 15.9 15.9 15.1 15.1 15.0 15.0 10.0 10.0 10.0 10.0 9.5 9.5
合計 325.1 234.6 348.0 259.9 296.7 235.2 245.6 200.8 219.4 184.5 196.4 171.2
  • 排水先:排水先は、河川(淡水の地表水)および下水道(第三者の放流)のみで、汽水の地表水/海水、地下水はありません。
  • 水源:フジヤマ工場の取水量には地下水が含まれます(2017年度:34.6千m3、2018年度:26.2千m3、2019年度:21.0千m3、2020年度:22.0千m3、2021年度:19.6千m3、2022年度:15.3千m3)。
    その他の施設については全て第三者の水源から取水を行っています。
    なお、いずれの施設も、淡水の地表水、汽水の地表水/海水、地下水(非再生可能)、随伴水/混入水からの取水はありません。
  • 福井研究所は、研究拠点の再編のため2022年3月に閉所しました。
  • 豊平川、大倉川、荒川、酒匂川、木曽川、琵琶湖、淀川、太田川、吉野川、那珂川
水質汚染リスク管理の取り組み

国際化学物質会議(ICCM)の第4回会議で、環境中の医薬品は「Emerging Issue」に挙げられ、欧州の製薬業界団体であるefpiaはEco-Pharmaco Stewardshipプログラムを公表するなど対応を進めています。
当社では水汚染リスクへの取り組みの一環として、生産の主力であるフジヤマ工場に排水の総排水毒性試験(WET試験)を取り入れました。
また、開発中の医薬品有効成分(API)について、構造活性相関(QSAR)を用いて水生生物への影響を評価し、安全データシート(SDS)への情報掲載を進めています。

水質/水量に関する違反件数
項目 対象範囲 単位 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
法的義務/規制違反の件数 全事業所 件数 0 0 0 0 0
上記に関連する罰金額/罰金額 全事業所 百万円 0 0 0 0 0
年度末に発生した環境負債 全事業所 百万円 0 0 0 0 0
外部からの評価

当社は、英国CDPが実施している水セキュリティの調査において、2018年度の「B」から2019年度および2020年度は「Aマイナス」、2021年度及び2022年度は最高評価である「A」へと評価が向上しています。

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