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TNFD提言に基づく情報開示

リード文

当社は、2024年7月に「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD、Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)」の提言への賛同を表明し、TNFD Adopter*に登録しました。TNFDの最終提言(v1.0)に沿って当社の事業活動における自然への依存と影響の確認を行うとともに、確認結果を踏まえたリスク・機会の特定と対応策を整理し、適切に情報開示を行います。

* TNFD Adopterについては「TNFD」のホームページ(英語)をご覧ください。

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TNFD提言に沿った情報開示

ガバナンス

当社は、生物多様性を含む地球環境の保全を重要な経営課題(マテリアリティ)の一つとして認識しています。代表取締役社長を環境経営の最高責任者とし、環境担当役員として代表取締役 副社長執行役員を任命し、中長期環境ビジョン「ECO VISION2050」のもと、中長期環境目標の達成に向けて取り組んでいます。
自然への依存と影響の評価、リスク・機会の特定および管理については、TNFDワーキンググループ(TNFD-WG)で検討し、環境担当役員が委員長を務める環境委員会およびサステナビリティ推進委員会、ならびに環境担当役員が議長を務め、経営層が出席するサステナビリティ戦略会議に報告あるいは提案されます。これらの会議体で報告あるいは承認された内容は、四半期に1回以上の頻度で取締役会に報告され、取締役会が監理を行っています。
このように、生物多様性に関する取り組みは、環境担当役員が現場レベルから一貫して統括し、それを取締役会が監理する体制としています。なお、各会議体の役割は、「TCFD提言に基づく情報開示」のガバナンスをご覧ください。

また、当社は国内外を問わず、あらゆる事業活動において、先住民族や地域社会の人々を含むすべてのステークホルダーの人権や多様な価値観、人格、個性を理解・尊重し、行動していくため、2020年7月に国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」をもとに、「小野薬品グループ 人権グローバルポリシー」を定めました(2023年6月改定)。さらに、当社がステークホルダーに与える人権への負の影響を特定し、その防止および軽減を図るため、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則した人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築しています。人権に関する取り組みを進めていく過程においては、ステークホルダーとの対話と協議を誠実に行っています。
人権に関する取り組みについてはこちらをご覧ください。

戦略
~生物多様性関連のリスク・機会の分析・評価~

TNFD-WGが中心となり、TNFDが推奨するLEAPアプローチ*に沿って、当社の事業活動における自然への依存と影響を確認し、リスク・機会の特定と対応策を検討しました。

  • LEAPアプローチは、自然関連のリスクと機会を体系的に評価するアプローチで、Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、Assess(評価する)、Prepare(準備する)の4つのフェーズから構成されています。

まず、当社の事業が生物多様性などの自然資本にどのように依存し、どのような影響を与えているかを把握するため、TNFDの提言や一般社団法人 企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)が開発した「企業と生物多様性の関係性マップ」を参考に、当社の医薬品事業における自然への依存と影響を整理しました。

図表

2023年度は、当社の事業活動における、「原材料・資材調達」(上流のバリューチェーン)、「研究・生産」(直接操業)、「輸送・販売」(下流のバリューチェーン)の各過程について、以下の手順に沿って自然への依存と影響を確認し、確認結果を踏まえたリスク・機会の特定、および対応策を検討しました。

当社の事業活動における自然への依存と影響の確認と確認結果を踏まえたリスク・機会の特定、および対応策の検討
評価手順次のSTEP 1~4の手順に沿って当社事業活動における自然関連のリスクと機会を特定しました。
STEP1:
ENCORE*を活用した医薬品事業にとって重要度が高い自然への依存と影響の確認
  • ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure)は、セクター別の自然資本への依存と影響を評価するツール(https://encorenature.org/en
STEP2:
Aqueduct*1による水リスク(水ストレスおよび洪水リスク)およびTNFD-IBAT*2による生物多様性リスクの評価
対象:上流のバリューチェーン(163社、181拠点)、直接操業(12グループ、85拠点)、下流のバリューチェーン(60社、110拠点)
リスクありと評価する基準
  • 水リスク:水ストレス(ベースライン/2050年(Pessimisticシナリオ、RCP8.5))および洪水リスク(河川/沿岸)のいずれかがHigh以上
  • 生物多様性リスク:3以上(種の脅威の軽減と回復に関する指標のレイヤーを5段階に分類)
  • Aqueductは、事業所の所在地情報(緯度・経度)から世界の水リスクを確認できる世界資源研究所(WRI)が開発した評価ツール(https://www.wri.org/aqueduct
  • TNFD-IBATは、生物多様性リスクを確認できるTNFDとIBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool)アライアンスが連携し公表している評価ツール(https://tnfd.global/guidance/locate-assessment-tools/
STEP3:
当社の事業継続のために重要な取引先に対して、自然への重大な依存あるいは影響が懸念される拠点*の特定
  • STEP 2においてリスクがあると評価された拠点に加え、環境マネジメントシステム(EMS)の取得状況や過去の環境事故および違反の有無のウェブサイト調査から、環境汚染等のリスクが懸念される拠点
STEP4:
リスク・機会の特定および対応策の検討
図表
評価結果
STEP1~3の評価結果から当社事業において重要、かつ自然への重大な依存あるいは影響が懸念される上流のバリューチェーンおよび直接操業の15拠点と下流のバリューチェーン7社(本社所在地)を優先地域として特定しました。
図表
STEP1~3の評価手順で特定した当社事業活動において重要、かつ自然への重大な依存あるいは影響が懸念される優先地域
NA:該当する拠点なし

STEP4では、特定した優先地域について、自然との接点(草原、山林、耕作地、河川の有無などの周辺環境)を再確認するとともに、気候や過去の自然災害の有無を調査し、想定される自然関連のリスクを考察しました。当社の事業活動を踏まえて、自然関連のリスクと機会を網羅的に抽出後、当社事業に及ぼす影響の大きさを指標に優先順位付けを行い、優先して対応すべきと考える自然関連のリスクと機会を特定しました。さらに特定した自然関連のリスクと機会について、リスク軽減および機会実現のための対応策を検討しました。

<生物多様性関連のリスク>

TNFDのリスク分類 リスクの内容 期間* 主な対応策
物理的リスク 急性
  1. 植物由来医薬品添加物の調達コストの増大
  2. 自然災害を原因とする汚染(有害物質の漏えい)や遺伝子組換え生物等の拡散による生態系回復コストの発生
短中長
  1. BCP対策の徹底(十分な原薬・製品在庫の確保/複数サプライヤー体制の構築)
  2. 化学物質および遺伝子組換え生物等の管理強化
  3. 水資源の効率的な利用
  4. ビジネスパートナー選定プロセスにおける自然災害リスクおよび水不足リスクの確認  等
慢性
  1. 水不足による生産活動への影響(工場の操業中断、生産コストの増大)
中長
移行リスク 政策
  1. 各国・地域での規制強化・導入への対応コストの増大
中長
  1. 規制動向を反映した戦略決定と対応実施
  2. 温室効果ガス排出量の削減
  3. 製品包装の環境負荷低減
  4. 廃棄物の再資源化率の向上
  5. 有害物質管理ならびに排水管理の徹底
  6. TNFD提言に沿ったリスクの特定とリスク軽減に向けた取り組み促進
  7. 中長期環境目標達成に向けた取り組み  等
市場
  1. 生物多様性を配慮した製品に社会全体の関心が移り、
    対応の遅れによる売上機会の損失
技術
  1. 化学物質等の排水分析の義務化への対応コストの増大
  2. 自然に対する影響を軽減させる新規技術の利用競争激化による事業活動の停滞
中長
評判
  1. 生物多様性への取り組み不足による企業価値の低下
中長
責任
  1. 自然災害や事故等による環境汚染の際の賠償責任の発生
短中長
  • 短期(~3年)、中期(3~10年)、長期(10~30年)

<生物多様性関連の機会>

TNFDの機会分類 機会の内容 期間* 主な対応策
資源効率
  1. 効率的な生産活動によるコストや廃棄物等の削減
中長
  1. 連続生産方式などの高効率生産プロセスを通じた省資源化
  2. グリーン・サステナブル・ケミストリーの概念を考慮した創薬技術の推進
  3. 生物多様性のための取り組みの推進および情報開示
  4. 生物多様性保全活動の推進(ネイチャーポジティブへの貢献)  等
市場
  1. 生物多様性とヘルスケアを関連づけた新規事業の創出
中長
資本フローと資金調達
  1. ESG指数の構成銘柄への採用やサステナブルファイナンスによる資金調達の可能性
短中長
評判
  1. 先進的な生物多様性への取り組みによる企業価値の向上
短中長
  • 短期(~3年)、中期(3~10年)、長期(10~30年)

2023年度のリスク・機会の特定では、当社事業の継続に大きな影響を及ぼす項目は特定されませんでした。今後も国際社会の動向を継続して注視するとともに、LEAPアプローチに沿って、当社の事業活動における自然への依存と影響の確認と、確認結果を踏まえたリスク・機会の特定、対応策の検討を定期的に実施します。また、下流のバリューチェーン(医薬品の使用)における医療機関および患者さんによる医薬品の使用で発生する自然関連のリスク・機会の特定についても、TNFDや科学に基づく目標ネットワーク(SBTN、Science Based Targets Network)の動向を踏まえながら、検討を進めて参ります。

リスクと影響の管理

特定した自然関連のリスクと機会および対応策は、TNFD-WGおよび環境委員会において管理しており、その管理状況は上記カバナンスに記載の環境ガバナンス体制を通して、取締役会が監理する体制をとっています。なお、自然関連のリスクと機会は、毎年、TNFD-WGにおいて見直しを行う予定としています。財務および事業継続に大きな影響を及ぼす可能性のある項目が特定された場合、リスクマネジメント委員会に共有し、そのリスクを管理します(リスクマネジメントの詳細についてはこちらをご覧ください)。
また、上流のバリューチェーンにおいて、新規契約を行う際には、上記戦略に記載のSTEP1~3の手順に沿って自然関連のリスクの有無を確認するとともに、リスクの軽減に向けたエンゲージメントを実施します。

指標と目標

地球環境課題に対する取り組みを強化・加速すべく、中長期環境目標のもとで活動を推進しています(中長期環境目標の詳細についてはこちらをご覧ください)。事業活動における自然へのマイナスの影響を最小化するとともに、社有地の緑地整備や新たな生物多様性保全活動による自然へのプラスの活動を通じて、2030年のネイチャーポジティブの実現に貢献できるよう、取り組みを推進していきます。
また、当社の自然への依存、影響、リスクと機会を評価し、管理するために設定した指標の内、目標を設定できていないものについては、順次、目標を策定し、開示していきます。

<TNFDのグローバル中核開示指標対照表>

依存と影響に関する指標
指標No. 自然変化の要因 指標 測定指標 2023年度実績 目標 参照先
- 気候変動 温室効果ガス排出量
  1. スコープ1
  1. 6.7千トン
  1. スコープ1+2
    2035年:温室効果ガス排出量ゼロ
  1. スコープ3
    2030年:30%削減
    2050年:60%削減
    (基準年:2017年)
  1. 脱炭素社会の実現
  2. ESGデータ集
  1. スコープ2
  1. 9.5千トン
  1. スコープ3
  1. 38.6千トン
   
   
C1.0 陸/淡水/
海洋利用の変化
総空間
フットプリント
  1. 当社が管理する総面積
  1. 0.32 km2
  1. 2024年3月期有価証券報告書
    p.37主要な設備の状況/提出会社
  1. 事業活動により荒廃した面積
  1. 0 km2
  1. 当社の取り組みにより回復/復元した面積
  1. 0 km2
C1.1 陸域/淡水/海洋利用の変化の範囲
  1. 当社が管理する緑地面積
  1. 0.10 km2
C2.0 汚染/汚染
除去
土壌に放出された汚染物質(種類別)
  1. 土壌に放出されたREACH規則*高懸念物質の総量
  • 欧州の化学物質管理における法規制
  1. 0トン
  1. 土壌汚染発生件数:0件
  1. 事故等による土壌汚染発生件数
  1. 0件
  1. 該当する従業員を対象とした定期的な教育訓練の実施
  1. 実施済み
C2.1 廃水の排出
  1. 排水量
  1. 167.1千m3
水質汚染リスク(研究所・工場)
  1. 2025年度までに排水の水生生物影響評価(WET試験)100%実施
  2. 2030年度までに上市品および開発化合物(Phase 3)の水生生物影響評価試験の結果公開(自社開発品対象)
  3. 法規制より厳しい排水管理の継続
  4. 関連法規制の違反発生件数:0件
サプライチェーンの水質汚染リスク管理
  1. 2026年度までに包括的なリスク管理体制を構築し、管理する
  1. 水循環社会の実現
  2. 生物多様性
  1. 公共下水・公共水域中に排出されたREACH規則高懸念物質および薬剤耐性を引き起こす物質*を含む排水量
  1. 0 m3
  • 当社は薬剤耐性の原因となる製品は製造しておりません
  1. 水濁法および下水道法の基準値違反発生件数
  1. 0件
  1. 医薬品原薬(API)の取り扱いによる水質汚染事故発生件数
  1. 0件
  1. 該当する従業員を対象とした定期的な教育訓練の実施
  1. 実施済み
   
   
   
有害化学物質の使用
  1. 自社製品におけるREACH規則高懸念物質の使用量
  1. 0トン
  1. PRTR法第一種化学物質取扱量(年間取扱量≧1トン)
  1. 1.7トン
C2.2 廃棄物の発生と処理
  1. 産業廃棄物(自社工場/研究所/物流センター)総排出量
  1. 569.7トン
  1. 通年:産業廃棄物の最終埋立処分率1%以下
  2. 再資源化率*:2025年度≧60%、2030年度≧80%
  • 算定方法:日本製薬団体連合会の算定マニュアルに準拠(対象:産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を含む)、事業系一般廃棄物、有価物、無償物)
  1. 製品包装の環境負荷低減 2030年度:100%対応(当社製造販売品目の個装箱)
  1. 資源循環社会の実現
  1. 特別管理産業廃棄物排出量(有害廃棄物)
  1. 145.5トン
  1. 最終埋立処分量(処分率)
  1. 0.1トン(0.01%)
  1. 廃棄物(自社工場/研究所/物流センター)の再資源化率
  1. 70.3%
   
   
   
C2.3 プラスチック汚染
  1. 製品包装に使用したプラスチックの総重量
  1. 193.5トン
  1. 資源循環社会の実現
  1. 製品包装に使用したリサイクルプラスチックまたはバイオマス由来プラスチックの使用率
  1. 5%
C2.4 非GHG大気汚染物質
  1. SOx
  1. 0.0トン
  1. ESGデータ集
  • PRTR制度に基づく社内資料
  1. NOx
  1. 5.0トン
  1. 煤塵
  1. 0.26トン
  1. 大気中に放出された揮発性有機化合物量
  1. 1.6トン*
C3.0 資源の利用/補充 水不足地域からの取水と消費
  1. 水不足地域からの取水量と消費量
  1. 0 m3(該当する自社事業所なし)
  1. 重要取引先に対して、水関連リスクに関する包括的なリスク管理を開始する(2026年度)
  1. 水循環社会の実現
  1. 水不足地域で操業する重要取引先数(Aqueductで水ストレスがHigh以上となった取引先:ベースラインと2050年評価)
  1. 4社
参考(直接操業)  
  1. 取水量
  1. 189.9千m3
  1. 渇水により取水制限をかせられた日数
  1. 0日(自社工場/研究所)
C3.1 陸域・海洋・淡水から調達するリスクの高い天然商品の量
  1. 高リスク天然1次産品使用量
  1. 調査中
C4.0 侵略的外来種 侵略的外来種の持ち込みへの対策
  1. 原材料輸入時に使用する消毒処理済み木材梱包材の使用率
  1. 100%
  1. 100%利用により侵入的外来種を持ち込まない
C5.0 自然の状態 生態系の状態
  1. 自然保全活動を実施した面積
  1. 0.1 km2
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